特定技能外国人の受け入れは,登録支援機関を使わずに自社でできることをご存知でしょうか。
これまで雇用していた技能実習生を特定技能に移行させ,移行後も同じ監理団体を登録支援機関として利用続けている企業様は多いのではないでしょうか。
しかし特定技能では,より良い条件の登録支援機関に変更したり,あるいは登録支援機関を利用せずに自社で支援を行ったりすることが可能です。
自社支援の場合は,支援の委託費用がかからないため大幅なコスト削減を実現できる場合があります。
ここでは、自社支援をする場合にどのような業務が発生するのか,業務の内容や手順について解説していきます。
自社支援で発生する業務
自社支援をする場合、どのような支援や手続きが必要になるのかざっと見ておきましょう。
10の支援の実施
特定技能で外国人を受け入れる企業に義務づけられている支援(義務的支援)は、以下の10項目です。あらかじめ作成した支援計画に沿って支援を行うことが必要です。
➀事前ガイダンス
事前ガイダンスでは、雇用条件や支援内容などを外国人に説明します。雇用契約をする前に,外国人が理解できる言語(基本的に外国人の母国語)で行います。事前ガイダンスで説明する事項は,法令で細かく決められており、3時間以上かけて実施することが必要です。
②出入国する際の送迎
外国人が日本に到着した際,港や空港から受け入れ企業の事業所,または外国人の住居まで送迎します。帰国の際には,港や空港の保安検査場(セキュリティチェック)の前まで同行しなくてはなりません。
③住居確保や生活に必要な契約のサポート
外国人の住居の保証人になったり,社宅を用意したりするなど,外国人が日本で住居を確保するときのサポートを行います。また,銀行口座の開設や携帯電話の契約などの生活に必要な契約のサポートも行います。
④日本での生活に関するオリエンテーション
生活オリエンテーションでは、銀行口座の開設方法や医療機関のかかり方、日本の生活マナーなど,外国人が日本での生活に困らないよう情報提供を行います。外国人が理解できる言語(基本的に外国人の母国語)で行う必要があります。生活オリエンテーションで説明する事項は法令で細かく決められており、8時間以上かけて実施することが必要です。
⑤公的手続き等への同行
外国人が健康保険や住所移転などの公的手続きをするとき,必要に応じて関係行政機関の窓口へ同行して書類作成のサポートをします。
⑥日本語を学ぶ機会の提供
外国人が日本語能力を向上できるよう,日本語教室や日本語学校に関する入学案内の情報を提供したり,入学手続きの補助を行います。外国人の希望によっては,上記の代わりに日本語学習教材の情報を提供したり,日本語教師と契約して日本語講習を行ったりしても構いません。
⑦相談や苦情への対応
外国人が仕事や日常生活などで困らないよう,苦情や相談に迅速に対応します。対応は必ず外国人が理解できる言語で行わなければなりません。
⑧地域住民との交流支援
外国人が日本で充実した生活を送れるよう,地域住民と交流できるイベントや行事の情報提供,また参加手続きのサポートを行います。必要に応じて外国人に同行し,行事の注意事項や実施方法を説明することも必要です。
⑨転職支援
受入れ企業の人員整理や倒産などの都合で外国人が転職することになった場合は、転職支援を行うことが必要です。転職先の情報を提供したり,ハローワークに案内したり,推薦状を作成したりするなどの方法で行います。
⑩定期面談
外国人本人および上司へ定期的な面談をする必要があります。回数は3ヶ月に1回以上です。面談内容の詳細を書面で報告(出入国在留管理局への届出)する義務もあります。その際、各種法令違反や人権侵害が発覚した場合は、適切な機関や報告しなくてはなりません。
上記10項目の支援は,受入れ企業が必ず行わなければならない支援です(義務的支援)。
これ以外にも,任意的支援として,プラスアルファのサポートを行うこともできます。
(参考資料:1号特定技能外国人支援に関する運用要領(出入国在留管理庁))
届出の手続き
上記の支援を行った後には,支援の実施状況について3か月に一回,入管に届出をする義務があります。その際には,それまでに行った支援に関する書類(定期面談報告書や相談記録書等)の添付も必要になります。
このほか,支援計画に変更があった場合などにも,随時届出を行わなければなりません。
これらの届出の手続きを怠ると,特定技能での受入れが認められなくなってしまうことがあるので確実に行うことが必要です。
自社支援の手順
次に,自社支援の手順を見ていきましょう。
実務の手順は法令で決められているため,必ず以下の手順どおりに行う必要があります。
これに関し,支援と支援の間に支援以外の手続き(雇用契約の締結や在留資格申請など)を行うとにも注目してください。
たとえば,外国人に入国手続きや雇用条件を説明するための「事前ガイダンス」の支援は,雇用契約の前に行う必要があります。
※10項目の義務的支援は黄色マーカー で示してあります。
海外または国内で,特定技能の試験に合格している外国人を採用します。技能実習2号を良好に修了している外国人の場合は,試験の合格は必要ありません。
支援援計画書は、支援の内容や計画,支援担当者などを記載する書面です(支援計画書の様式はこちら)。支援計画書は,後の在留資格申請で提出し審査の対象となるため、法令に沿って慎重に作成する必要があります。
事前ガイダンスでは,雇用条件や入国の手続きなどを外国人に説明します。事前ガイダンスで説明する項目は法令で決められており、3時間以上かけて実施することが必要です。外国人が理解できる言語(基本的に外国人の母国語)で行います。
③の事前ガイダンスで説明した雇用条件について外国人の同意を得られたら,外国人と雇用契約を結びます。
最寄りの入管で特定技能1号の在留資格申請をします。外国人を海外から呼び寄せる場合は,在留資格認定証明書交付申請をし,国内にいる外国人の場合は,在留資格変更許可申請をします(申請書の様式はこちら)。行政書士などに申請の代行を依頼することも可能です。審査には,平均約1~2カ月かかります。
在留資格申請で許可が下りたら,外国人の住居を用意したり,来日時の空港への出迎えをしなければなりません(海外から来日する外国人の場合のみ)。
外国人の入社後4カ月以内に特定技能協議会に入会する手続きをします。
※分野によっては⑤の在留資格変申請前に入会する必要があります。
外国人の入社後すぐに実施し,外国人が日本で生活を始めるにあたって必要となる情報を伝えます。生活オリエンテーションに盛り込む内容は法令で定められており、8時間以上かけて実施することが必要です。外国人への説明は,外国人が理解できる言語(基本的に外国人の母国語)で行います。
②④⑥⑧以外の支援(公的手続きへの同行,日本語を学ぶ機会の提供,相談苦情への対応,地域住民との交流支援,転職支援)を開始します。これらの支援は外国人の入社後,必要に応じて随時行うものです。支援計画書に記載したとおりに実施します。
3カ月に一回以上,外国人及びその監督をする立場にある人と定期面談を実施します。面談では,雇用契約や入管法に反したトラブルはないかなどを確認します。面談終了後には,面談報告書を作成しなければなりません。
支援の実施状況に関し,3カ月に1回,定期的に届出をする義務があります。届出を怠ると外国人の受入れができなくなってしまうので大変重要な手続きです。このほか,支援計画に変更があった場合等にも随時届出をしなくてはなりません。自社で難しい場合は,行政書士に代行してもらうことも可能です。
⑨以外にも,外国人の受入れ状況に関する届出など,しなければならない届出が多数あります。⑥と同様,これらの届出を怠ると外国人の受入れができなくなってしまうので大変重要な手続きです。自社で難しい場合は,行政書士に代行してもらうことも可能です。