外国人が日本で働く場合には必ず就労ビザが必要です。そして,介護職の外国人が取得する就労ビザは主に,
「介護」「特定技能」「技能実習」
のいずれかです。
以下の図表のように,就労条件等は就労ビザの種類ごとに異なりますが,受入れ手続きについても,就労ビザごとに大きく異なります。
ここでは,図表右の「介護」ビザでの受入れ手続きについて解説していきます(「特定技能」ビザの受け入れ手続きについては、こちらで解説しています)。
就労ビザ(在留資格) | 「 | 技能実習」ビザ「 | 特定技能」ビザ「 介護」ビザ |
介護福祉士資格 | なし | なし | あり |
就労期間 | 最長5年 | 最長5年 | 永続的 |
採用ルート | 海外 | 国内または海外 | 国内または海外 |
転職 | × | 〇 | 〇 |
「介護」ビザの手続きの手順
「介護」ビザの手続は他の就労ビザと比べると大変シンプルです。このため,専門家に任せず自社で手続きを行うケースも多いようです。介護福祉士養成校の新卒留学生を採用した場合は、学校がビザ手続きのサポートをしてくれる場合もあります。
しかし、ビザ申請にあたり、気になる問題や特別な事情がある場合には、行政書士などの専門家を利用しながら行うほうがよいでしょう。
以下に「介護」ビザの手続きの流れを解説していきます。
自社で求人募集を行い,外国人を採用します。
外国人が介護職として施設で就労するにあたっては「介護」ビザを取得しなければなりませんので、「介護」ビザを取得できる外国人を採用することが大前提となります。
介護ビザを取得できる外国人、すなわち採用対象者は以下①②のいずれかの外国人です。
【採用対象者】
①日本の介護福祉士国家試験の合格者
②日本の介護福祉士養成校を卒業した人
なお、これらの外国人を対象とした求人募集の方法としては、以下のようなものがあります。
・介護福祉士養成施設に求人を出す
・就職相談会を開催する
・自治体などが開催している合同企業説明会に参加する
・人材紹介会社(職業紹介事業者)を利用する など
採用活動にあたり、日本語学校や養成施設の留学生に奨学金を支援することで人材獲得につなげている施設もあります。
外国人の採用が決まったら、労働条件通知書または雇用契約書を作成して外国人に労働条件を伝えます。
労働条件通知書とは、就労期間や職務内容、賃金、始業・就業時間、休日などの労働条件を明示する書類です。このような労働条件の明示は労働基準法で義務として定められていますので、とくに外国人のビザ手続のためにするものではありません。
しかし、採用後に行うビザ申請の際には労働条件通知書を提出することが必要になりますので、あらかじめ法令に基づいて適正なものを作成しておかなければビザ申請の許可が下りません。
また、労働条件通知書の代わりに雇用契約書を作成することも可能です。
雇用契約書は、労働条件通知書のように作成義務はなく記載する内容も自由です。しかし、労働条件について必要事項を明記することで、労働条件通知書の役割を兼ねた書面として扱うことができます。
ここで、「労働条件通知書と雇用契約書のどちらを作成すべきか?」という疑問が生じると思いますが、
これに関し、実務面で重視すべき点は以下のようなものです。
・労働条件通知書…労働者に対する一方向的な通知書
・雇用契約書…両者の合意を示す署名捺印が必要
雇用契約書が、施設側と外国人側の両者の合意のもとで作成されるといった点をふまえると、書面の内容に関して後に「言った、言わない」のトラブルを回避できるできるのは雇用契約書のほうだといえるでしょう。
このような意味で、できる限り雇用契約書を作成することをお勧めします。
申請書を作成し,雇用契約書や介護福祉士資格登録証の写しなどを用意します。
【主な提出書類】※国内の外国人が「介護」ビザへの在留資格変更申請を行う場合
- 申請書
- 証明写真
- パスポート
- 在留カード
- 介護福祉士登録証(写し)
- 労働条件通知書または雇用契約書
- 受け入れ施設のパンフレットや案内書
ビザ申請は、外国人本人が入管の窓口で行います。このため、手続きを確実に行いたい場合は、手続きを外国人だけに任せず、担当者が同行したり、行政書士などに手続きを依頼するほうがよいでしょう。
ビザ申請の審査期間は,国内の外国人の在留資格変更の場合は2週間~1カ月,海外の外国人の呼び寄せ(在留資格認定証明書交付申請)の場合は1カ月〜3カ月かかります。これにくわえ,2週間~1か月程度の申請準備期間も考慮しておくことが必要です。
【新卒留学生の手続き】… 新卒留学生の場合、ビザ申請に必要となる介護福祉士登録証が、就労開始日の4月1日までに交付されていない場合があります。しかしその場合でも、現在の「留学」ビザを「特定活動」ビザに変更することで、介護福祉士登録証が交付されるまでの間も予定どおり働いてもらうことができます。なお、「介護」ビザへの変更は、介護福祉士登録証が交付された時点で可能になります。
国内の外国人の場合は,入管で許可を得た当日から就労できます。
海外の外国人の場合は,入管で許可を得た後,母国での査証手続き(所要期間:1週間程度)を経て来日し,来日した当日から就労できます。
外国人が入社したら,雇用主はハローワークに外国人の雇入れの届出(外国人雇用状況届出)を行う義務があります。
在留期限の3か月前からビザ更新の申請ができます。うっかり在留期限を過ぎてオーバーステイになり、違法な就労をさせてしまわないよう,受入れ側でも在留期限の管理をし,確実に手続きを行う必要があります。
ビザ更新についても,行政書士などに手続きを依頼することが可能です。
いかがでしたでしょうか?
当事務所の出版書籍「ゼロからはじめる外国人介護スタッフの採用ガイド」(中央法規出版)でも、豊富なイラストを交えて手続きをわかりやすく解説しています。
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初回相談は無料です。