外国人の就労ビザは,従事できる業務範囲が限定されています。このため,外国人の求人募集を行う際の手順としては,①業務内容に適した就労ビザを選び,②その就労ビザの取得要件をみたす外国人を対象に募集をかけます。
ここでは,現在最も取得されている就労ビザである「技術・人文知識・国際業務」「特定技能」「技能実習」について具体的な募集方法を解説していきます。
「技術・人文知識・国際業務」ビザの求人募集
募集職種
「技術・人文知識・国際業務」ビザの業務範囲はホワイトカラーの仕事に限定されています。また,単純労働が厳しく禁止されていることにも注意が必要です。
「技術・人文知識・国際業務」の対象業務
「技術」 | 「人文知識」 | 「国際業務」 |
IT技術者,研究・開発,設計, 品質管理など | 営業,マーケティング, 企画,広報・宣伝, 会計・財務など | 海外取引業務,貿易 業務,通訳・翻訳, デザイン,私企業の 語学教師 など |
「技術・人文知識・国際業務」ビザの業務範囲の詳しい解説は,こちらをご覧ください。。
求人募集の対象者
「技術・人文知識・国際業務」ビザを取得できるのは,国内の専門学校卒以上の学歴がある外国人,または海外の短大以上の学歴がある外国人です。日本語学校の卒業はビザの取得要件をみたしません。
このほか,それらの教育機関で専攻した科目が,これから従事しようとする業務内容に関連があることも必要です。
したがって,このような学歴を持つ外国人を対象として募集をかける必要があります。
求人募集の方法
「技術・人文知識・国際業務」ビザでは,採用方法は特に指定されていません。日本人の採用と同様,企業が自由な形で募集をかけられます。
したがって,「技術・人文知識・国際業務」ビザを取得可能な外国人を募集するには,以下のような方法が考えられます。
- 大学や専門学校に求人を出す
- 自治体などが主催する外国人留学生向けの合同企業説明会や企業見学ツアーを利用する
- 人材紹介会社(有料職業紹介事業者)を利用する
- 求人サイトに掲載する
- ハローワークに求人を出す
- SNSを活用する
上記のほか,派遣会社を利用して派遣社員として外国人を受入れることも可能です。人脈を利用して海外の人材を紹介してもらうケースもあります。
「特定技能」ビザの求人募集
募集職種
「特定技能」ビザの業務範囲は,人手不足が深刻な12分野(業種)に限定されています。分野だけでなく,職種・業務内容も細かく指定されているので注意が必要です。
特定技能の対象職種一覧
分野 | 業務内容 |
---|---|
①介護 | ・身体介護等(利用者の心身の状況に応じた入浴、食事、排せつの介助等)のほか、これに付随する支援業務(レクリエーションの実施、機能訓練の補助等)(注)訪問系サービスは対象外 |
②ビルクリーニング | ・建築物内部の清掃 |
③素形材・産業機械・ 電気電子情報関連 製造業 | ・鋳造・鍛造・ダイカスト・電気機器組立て・電子機器組立て・プリント配線板製造・工場板金・めっき・アルミニウム陽極酸化処理・プラスチック成形・塗装・溶接・工業包装・機械加工・金属プレス加工・鉄工・仕上げ・機械検査・機械保全 |
④建設 | ・型枠施工・左官・コンクリート圧送・トンネル推進工・建設機械施工・土工・屋根ふき・電気通信・鉄筋施工・鉄筋継手・内装仕上げ・表装・とび・建築大工・配管・建築板金・保温保冷・吹付ウレタン断熱 ・海洋土木工 |
⑤造船・舶用工業 | ・溶接・塗装・鉄工・仕上げ・機械加工・電気機器組立て |
⑥自動車整備 | ・自動車の日常点検整備、定期点検整備、分解整備 |
⑦航空 | ・空港グランドハンドリング(地上走行支援業務、手荷物・貨物取扱業務等) ・航空機整備(機体、装備品等の整備業務等) |
⑧宿泊 | ・宿泊施設におけるフロント、企画・広報、接客及びレストランサービス等の宿泊サービスの提供 |
⑨農業 | ・耕種農業全般(栽培管理、農産物の集出荷・選別等) ・畜産農業全般(飼養管理、畜産物の集出荷・選別等) |
⑩漁業 | ・漁業(漁具の製作・補修、水産動植物の探索、漁具・漁労機械の操作、水産動植物の採捕、漁獲物の処理・保蔵、安全衛生の確保等) ・養殖業(養殖資材の製作・補修・管理、養殖水産動植物の育成管理、養殖水産動植物の収獲(穫)・処理、安全衛生の確保等) |
⑪飲食料品製造業 | ・飲食料品製造業全般(飲食料品(酒類を除く)の製造・加工、安全衛生) |
⑫外食業 | ・外食業全般(飲食物調理、接客、店舗管理) |
求人募集の対象者
「特定技能」ビザを取得できるのは,以下の日本語試験と技能試験の両方に合格している外国人です。
①日本語試験(国際交流基金日本語基礎テスト or 日本語能力試験N4)
②技能試験(分野・業務内容ごとに受験)
※介護分野は①に加え「介護日本語評価試験」の合格も必要
なお,3年間の技能実習(技能実習2号) を修了した人は,上記の日本語試験、および技能実習を終えた職種と関連する業務の技能試験が免除されます。
特定技能の試験についてのより詳しい解説は,こちらをご覧ください。。
求人募集の方法
「特定技能」ビザでは,外国人の採用方法は特に指定されていません。日本人の採用と同様,企業が自由な形で募集をかけられます。国内のほか,海外からの採用も可能ですが,フィリピンやカンボジアなどの一部の国については,現地の送り出し機関から人材のあっせんを受ける必要があるので注意が必要です。
「特定技能」ビザの対象者を採用するには,以下のようなルートが考えられます。
【国内採用】
- 試験合格者の採用(留学生など)
- 技能実習修了者の採用(技能実習生の継続雇用など)
【海外採用】
- 試験合格者の採用
- 帰国した技能実習生の採用
具体的な求人募集方法は以下のようなものがあります。
なお,技能実習を修了した外国人を継続的に雇用する場合は採用活動は必要ありませんので,採用活動のための費用や労力の大幅な削減になるでしょう。
- 日本語学校や専門学校に求人を出す(試験合格者を募集)
- 自治体などが主催する外国人留学生向けの合同企業説明会などを利用する
- 人材紹介会社(有料職業紹介事業者)を利用する
- アルバイトで雇用している留学生を卒業後に継続雇用する(在学中に特定技能の試験合格が必要)
- 近隣の監理団体や登録支援機関に問い合わせる(求職者の情報を持っている場合があるため)
- SNSを活用する
- 国のマッチングイベントを利用する(オンラインでの就職面接会,参加企業の動画配信,交流会)などに参加する。詳細は出入国在留管理庁の特定技能総合支援サイトに掲載されています)
「技能実習」ビザの求人募集
技能実習生の採用は,「技術・人文知識・国際業務」ビザや「特定技能」ビザのように,企業が単独で人材を採用することはできません。
技能実習生を採用するには,監理団体に入会し,そこから人材のあっせんを受けることが必要です。
はじめて技能実習生を受け入れる場合には,地域の監理団体に問い合わせてみるか,もしくは,知り合いの事業者が技能実習生を雇用している場合はおすすめの監理団体を紹介してもらうとよいでしょう。
全国の監理団体は外国人技能実習機構のホームページで検索できます。
監理団体を選ぶ際には,希望する実習の期間(3年または5年)や実習を行う職種に合った監理団体を選ぶことが必要です。
外国人の採用は,在留資格を考慮しながら進めることが必要です。
当事務所では,企業様向けの採用コンサルティングを行っています。
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