外国人のアルバイトというと留学生のアルバイトをよく聞きますが,就労ビザ※の外国人が勤務時間外にアルバイトや副業をすることが可能なのでしょうか。ここでは,ケースごとに解説してきたいと思います。
※ここでは,「技能実習」と「特定技能」を除く高度人材向けの就労ビザについて解説しています。
アルバイトの許可が不要なケース
就労ビザでは,就労できる仕事内容が限定されています。したがって就労ビザの外国人は,原則として,現在取得している就労ビザの範囲内の仕事にしか就くことができません。
たとえば,以下ような形です。
「教授」ビザは,大学教授の仕事
「教育」ビザは,学校教師の仕事
「介護」ビザは,介護福祉士の仕事
「技術・人文知識・国際業務」ビザは,企業などにおけるホワイトカラーの仕事(技術職,通訳・翻訳等)
そして,これはアルバイトの場合も同様です。
アルバイトで従事する仕事内容が,現在取得している就労ビザの範囲内の仕事であれば,許可(資格外活動許可)を得ずにアルバイトをすることができる場合があります。例えば,通訳者として働く「技術・人文知識・国際業務」ビザの外国人が,休日に通訳や翻訳のアルバイトをしても問題にはならないでしょう。
アルバイトの許可が必要なケース
一方で,取得している就労ビザの業務範囲を超える場合でも,アルバイトをすることが認められる場合があります。
その場合,一定の条件をみたし入管で事前に「資格外活動許可」(アルバイトの許可)を受ける必要があります。
この場合の資格外活動許可は「個別許可」といい,勤務先や活動内容等が個別に指定され,指定された範囲内のみでのアルバイトが認められるものです。留学生が通常取得する勤務先や仕事内容が指定されない資格外活動許可(包括許可)とは異なるものです。
資格外活動許可を得るための条件
就労ビザの外国人が,資格外活動許可を取得するための条件について解説していきます。
①単純労働は不可
就労ビザの外国人の資格外活動許可は,単純労働のアルバイトでは許可されません。
例えば、飲食店のウェイトレスやコンビニのレジ係,工場のライン作業員などの仕事は単純労働とみなされますので,資格外活動許可を得られず,アルバイトをすることはできません。
就労ビザの外国人がこのような単純労働のアルバイトをした場合は,違法な就労とみなされ大きな問題になってしまいます。
それでは,具体的にどのような仕事であればよいのでしょうか?
答えは,以下の就労ビザのいずれかに該当する仕事です。
外交 | 日本国政府が接受する外国政府の外交使節団若しくは領事機関の構成員,条約若しくは国際慣行により外交使節と同様の特権及び免除を受ける者又はこれらの者と同一の世帯に属する家族の構成員としての活動 |
公用 | 日本国政府の承認した外国政府若しくは国際機関の公務に従事する者又はその者と同一の世帯に属する家族の構成員としての活動(この表の外交の項に掲げる活動を除く。) |
教授 | 本邦の大学若しくはこれに準ずる機関又は高等専門学校において研究,研究の指導又は教育をする活動 |
芸術 | 収入を伴う音楽,美術,文学その他の芸術上の活動(二の表の興行の項の下欄に掲げる活動を除く。) |
宗教 | 外国の宗教団体により本邦に派遣された宗教家の行う布教その他の宗教上の活動 |
報道 | 外国の報道機関との契約に基づいて行う取材その他の報道上の活動 |
高度専門職 | 一 高度の専門的な能力を有する人材として法務省令で定める基準に適合する者が行う次のイからハまでのいずれかに該当する活動であって,我が国の学術研究又は経済の発展に寄与することが見込まれるもの イ 法務大臣が指定する本邦の公私の機関との契約に基づいて研究,研究の指導若しくは教育をする活動又は当該活動と併せて当該活動と関連する事業を自ら経営し若しくは当該機関以外の本邦の公私の機関との契約に基づいて研究,研究の指導若しくは教育をする活動 ロ 法務大臣が指定する本邦の公私の機関との契約に基づいて自然科学若しくは人文科学の分野に属する知識若しくは技術を要する業務に従事する活動又は当該活動と併せて当該活動と関連する事業を自ら経営する活動 ハ 法務大臣が指定する本邦の公私の機関において貿易その他の事業の経営を行い若しくは当該事業の管理に従事する活動又は当該活動と併せて当該活動と関連する事業を自ら経営する活動 二 前号に掲げる活動を行つた者であつて,その在留が我が国の利益に資するものとして法務省令で定める基準に適合するものが行う次に掲げる活動 イ 本邦の公私の機関との契約に基づいて研究,研究の指導又は教育をする活動 ロ 本邦の公私の機関との契約に基づいて自然科学又は人文科学の分野に属する知識又は技術を要する業務に従事する活動 ハ 本邦の公私の機関において貿易その他の事業の経営を行い又は当該事業の管理に従事する活動 ニ 2号イからハまでのいずれかの活動と併せて行う一の表の教授,芸術,宗教,報道の項に掲げる活動又はこの表の法律・会計業務,医療,教育,技術・人文知識・国際業務,介護,興行,技能,特定技能2号の項に掲げる活動(2号イからハまでのいずれかに該当する活動を除く。) |
経営・管理 | 本邦において貿易その他の事業の経営を行い又は当該事業の管理に従事する活動(この表の法律・会計業務の項に掲げる資格を有しなければ法律上行うことができないこととされている事業の経営又は管理に従事する活動を除く。) |
法律・会計業務 | 外国法事務弁護士,外国公認会計士その他法律上資格を有する者が行うこととされている法律又は会計に係る業務に従事する活動 |
医療 | 医師,歯科医師その他法律上資格を有する者が行うこととされている医療に係る業務に従事する活動 |
研究 | 本邦の公私の機関との契約に基づいて研究を行う業務に従事する活動(一の表の教授の項の下欄に掲げる活動を除く。) |
教育 | 本邦の小学校,中学校,義務教育学校,高等学校,中等教育学校,特別支援学校,専修学校又は各種学校若しくは設備及び編制に関してこれに準ずる教育機関において語学教育その他の教育をする活動 |
技術・人文知識・国際業務 | 本邦の公私の機関との契約に基づいて行う理学,工学その他の自然科学の分野若しくは法律学,経済学,社会学その他の人文科学の分野に属する技術若しくは知識を要する業務又は外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務に従事する活動(一の表の教授,芸術,報道の項に掲げる活動,この表の経営・管理,法律・会計業務,医療,研究,教育,企業内転勤,介護,興行の項に掲げる活動を除く。) |
企業内転勤 | 本邦に本店,支店その他の事業所のある公私の機関の外国にある事業所の職員が本邦にある事業所に期間を定めて転勤して当該事業所において行う技術・人文知識・国際業務に該当する活動 |
介護 | 本邦の公私の機関との契約に基づいて介護福祉士の資格を有する者が介護又は介護の指導を行う業務に従事する活動 |
興行 | 演劇,演芸,演奏,スポーツ等の興行に係る活動又はその他の芸能活動(この表の経営・管理の項の下欄に掲げる活動を除く。) |
技能 | 本邦の公私の機関との契約に基づいて行う産業上の特殊な分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する活動 |
これらはすべて高度人材向けの就労ビザです。専門性が低い業務を行う「特定技能」ビザと「技能実習」ビザは除外されています。
アルバイトの典型的な例としては,以下のようなものがあります。
例1:中学校で英語教師(ALT)として働いている「教育」ビザの外国人が,民間の語学学校で語学教師のアルバイトをする。
例2:大学で教授として働いている「教授」ビザの外国人が,民間企業で通訳・翻訳のアルバイトをする。
②取得している就労ビザの活動の妨げにならないこと
外国人は皆,在留資格で定められている活動を行うことを前提に日本での滞在が許可されています。
このため,就労ビザの外国人がアルバイトをする場合には,取得している就労ビザで行うべき業務を行っていることが大前提となり,その妨げにならない程度でアルバイトをすることが必要とされます。
③アルバイト先がすでに決まっていること
就労ビザの外国人が資格外活動許可を申請するためには、アルバイト先がすでに決まっており,そこで働くことを前提として許可を取得します。勤務先や活動内容等が指定されたうえでアルバイトが認められるという点で,留学生が通常取得する資格外活動許可とは異なります。
④勤務先の同意を得ていること
現在就労ビザで働いている勤務先が,アルバイト・副業をすることについて同意していることが必要です。実際,副業を認めていない会社も多いですので,その点で断念せざるを得ないケースもあるかもしれません。
これらの条件のほかに,素行に問題がないことや,違法なアルバイトではないこと,あるいは風俗営業所での就労ではないことなどの細かな要件もあります。
当事務所では,資格外活動許可の申請代行も行っています。
初回相談は無料です。お気軽にお問い合わせください。